”私は、家に帰んなくちゃ何ないんだ・・。息子はどこにいんの? 二階はどこからいくの?”
何度も事業所内を行き来しながら、不安で何度もスタッフや他のお客様に怒ったり、落ち込んだりする毎日が続いておりました。ご自身でも記憶がなくなっていく悔しさ、身に覚えのない環境、人・・・。
”私も馬鹿だから、忘れっちまうんだな・・。”
時にテーブルに顔を埋め、悲しむ表情も見せておりました。
スタッフは、”本人様の気持ちを何とか安らげる環境として差し上げたい”
その一心でした。
在宅で過ごしている時から、本人様に携わりいつも自宅にいても荷物をまとめて”実家に帰る”と話す日々。その姿を訪問を通じて、見てまいりました。ご家族ともご本人が自宅で生活を続けていくのは難しくなっていくお姿を見ていく中で
”少しでも安心して過ごしてもらいたい”
との思いの中、環境が変わることでの不安はあったことでしょう。
入居当時から医療職、他のお客様、職員との関わりを通じ、現在では不安は少なからず残っている部分もありますが、毎日一緒に生活していて、話したい時にすぐ答えてくれる環境、毎日見る顔ぶれ、
”名前は覚えていないが何となく見たことがある。”
その些細なきっかけでも本人の気持ちに”安心感”が芽生えてきたように感じるのです。
今では、テーブルを囲み笑顔で話ができ、エプロンたたみ、お盆ふき、モップがけ、テーブルふきや衣類干し等、
”何でもやっぱい!”
その言葉にその方にとっての居場所(家)という心が休まり、意欲、生きがいにつながる何かを感じたような気がしました。
私たちは、お客様にとってどうあるべきなのか?共に過ごすとはどういうことなのか?いつでも聞いてくれるとはどういうことなのか?
日々、そのことについて寄り添い、探求し続けるところにそのお客様の”安心できる居場所(家)”ができるのではないだろうかと考えます。