空洞に入れたいもの ~ある職員の想い~【ハーモニー並木】

ある日、机の上にある職員からのメッセージが置いてありました。今考えていること、想いを伝えたいとあり、深く共感する思いでしたので、紹介したいと思います。

介護が必要になるには様々な理由があります。その中でも認知症を患ったお客様方を見ていると本当にたくさんのことを考えさせられる日々です。

毎日デイサービスをご利用のお客様は「わからなくて情けない。世話になるばかりで何もできない、歳をとるってホントに情けない。早く死にたい」と毎日話されます。分からなくなっている事を分かっているのがどんなに辛いことか。私たちには想像するしかありません。

また、自宅で一人で生活されていたお客様は、1人で居ることが不安で不安で居てもたってもいられず、宿泊利用となり約1ヶ月。持ってきたいものがあるからと久しぶりに自宅へ戻ると飼っていたインコの餌が無かったことや家の中の様子に「自分は毎日ご飯をちゃんと食べれてるのに」と涙をながし、嘆かれます。一人で居ること分からなくなる自分への不安と、可愛がっていたペットへの申し訳なさなど、私たちには分からない心の葛藤、寂しさ、情けなさ、悲しみなどがきっとあったのだと思います。

また、毎日デイサービスを利用されている認知症が進行しているお客様は、良かれと思って周りの方に話しかけますが、お話が通じず、分かってもらえずに、混乱し、表情が硬くなっていきます。「私は真面目に生きてきただけなの。なんでこんなことを言われるの?」と落ち着きをなくします。

私たちは介護の分野で教育を受け様々な経験を通し、お客様と過ごしています。でも「忘れていくのが分かるその恐怖」は、いくら知識をつけても分からないことだと思うのです。でも、持っている知識を使ってできることはたくさんあるのではないでしょうか?

頭の中が委縮して空洞が広がって認知症になるのなら、その空洞の中に、焦り、悲しみ、苦しみを詰め込むのではなく、愛情や優しさや慈しみでいっぱいにして、「忘れちゃうけど、まぁいっかぁ」と笑ってもらいたいなと思うのです。

体のあちこちが痛くなっても、忘れっぽくなっても「歳をとるって意外と楽しいじゃん!」と思ってもらいたいのです。そういう世界であってほしいから私たちはこれからもそっと寄り添っていきたいと心に誓い、毎日過ごしていきたいと思います。

先ほどの早く死にたい、情けなくて涙が出る、なんでこんなことを言われるのと心が乱れてしまったお客様方ですが、今では「今日のご飯、美味しい~‼」と満面の笑みを見せて下さっていることをお伝えしておきますね(o^―^o)